カタやんのとよのマル秘情報ファイル No.9

「そしてワシは途方に暮れる...茶味礼賛 第4煎   

 この夏ワシは、春の番茶の水出し一辺倒じゃった。きっかけは実にささいなことで、確かあれは7月末頃のことじゃった。
クソ暑い悪夢のような夏が始まろうとしていた。ワシは来るべき酷暑の季節にそなえ、ほうじ茶に煎茶や和紅茶と、夏を乗り切る2018年夏のお茶を探し求めておったんじゃがこれというのが見つからない。どのお茶もワシの心ぽっかり空いた穴を埋めることはできんかった。
   ワシのガラスのハートにぽっかりあいた穴。それはもちろん6月に大阪北部を襲った大地震。阪神淡路の巨大地震を体験したワシは、まさか2度までもうんざりするような災厄に見舞われるとは思ってもいなかった。うかつじゃったと悔やんだところであとのまつりじゃ、どうにもならぬ。ワシの部屋は、ワシの腰あたりまで崩れた本で埋め尽くされ、机の上にもうずたかく本は押し寄せた。そしてワシは途方にくれた。今ワシは、本に埋もれながらも九死に一生を得たノートパソコンでこのブログを書いておる。

 

  思い返せば23年前、総崩れした本の山の前でワシは決意したのではなかったか。「もう2度と恋などしない」と…。本に恋し紙の海に溺れる愚とはキッパリ縁を切ったはずじゃった。にもかかわらず、性懲りもなくワシはふたたび本に埋もれた部屋の前で立ちつくし、そしてワシは途方にくれる。
 この日以来、欠かさず飲んでいたゆっくりと茶が、何を飲んでも、どんな飲み方をしても以前のように美味しいとは思えなくなってしまった。それでもなんとか夏序盤の猛暑は、冷たい水出し煎茶で乗り切った。水出し煎茶の味わい深さについては、前々回のブログ#7「何も言えなくて、夏の煎茶」に詳しく書いておるからご参照いただきたい。
 が、そこまでじゃった。7月末にワシの心は折れた。日々、茶葉の量は増し、濃いお茶に傾倒していくが、いくらお茶を濃くしてもワシは満たされない。夏はまだこれからじゃという時にワシの心は折れた。濃い〜耕心茶で心に喝を入れてみようとしたが、健康茶の代名詞、お茶の中のお茶、お茶ワールドのホームラン王、耕心茶をもってしてもワシの心は癒せなかった。大阪北部地震でずたずたになったワシの心に必要なのは、ガツンとくる刺激じゃと、ワシは思いこんでしまっていった。
 そこで「ゆっくりとほうじ茶」をふだんはさっぱり甘みも楽しみながら飲んでおったのじゃが、この時だけはすこぶる濃い目にして深く煎じて飲んでみた。ガツッときて悪くはなかったが、なにかが足りない…
 さあ、こまった。どないしたらええんやろう?汗だくになりながら、崩れた本の山を整理していた休日の昼さがり、ワシはすべてが面倒くさくなって、なにもかもがどうでもよくなって、やけっぱちで春の番茶の茶葉をケチくさく、ほんのひとつまみだけボール茶こしに放り込み、2リットルのヤカンに入れた。なみなみと水を満たして。春の番茶は水出しにすると血糖値を抑える成分、ポリサッカライドが抽出されると注目のお茶であった。

   

 待つこと15分。グラスにそそぎひととき清涼を求める。用意したグラスは3種類。カップではなく断然グラス。夏はガラスの器じゃよ。200ccのコーヒーカップ、350ccのロンググラス、そして500ccのビアグラス。その日の気分でお好みの器を決めるのが、お茶大好きフリーター、ワシの流儀じゃ。この日は、ロングカクテルを飲みたい気分もあって、真ん中の350ccのグラスでイッキに水出し番茶を飲み干した。するとどうじゃじゃ。ワシがこれまで敬遠していた水出し番茶特有のナマっぽい(ナマなのだから当然じゃが)青臭さを感じることもなく、ほんのり甘く奥ゆかしい春の番茶が溶け出していた。ワシが思うにおいしいお茶の要因は、1、「いつもより茶葉を少なめにしたこと」。2、「酷暑の日々に水温も気温なみに上昇、なまぬるい水で茶を出ししたこと」が、疲れたワシの心をもみほぐす絶妙の味わいにつながったのではなかろうかい。

 

  もちろん、「ゆっくりと茶」が無農薬・自然栽培茶で、がぜん健康的であることや、とくに「春の番茶」は、茶樹を越冬させて翌年の春収穫することで大地と空間のエネルギーをがっぽり吸収しているといった超自然的恩恵など、ワシの心にプラシーボ的作用をもたらしたと言えなくもない。さらに、科学的な観点からも、水出しの番茶には、血糖値をおだやかにするポリサッカライドが含まれておるので、体調が改善するのも当然と言えば当然なのだが、今回ばかりは、すべてを超越した何かがワシに手を差し伸べていた。茶葉を少なくしたことで茶葉さんたちが頑張ってくれて、茶のおいしさを引きだしてくれたのかもしれぬ。茶葉のやさしさが、ゆっくりとワシを元気づけてくれたのじゃと思いたい。
8月に入ってからは、連日2リットルのヤカンで朝夜2回、水出し春番茶をつくり飲み続けた。このお茶のおかげでワシは、厳しい夏の後半を乗り切った。夏バテにやられがちな季節の変わり目、なぜか心沈む秋の憂いにも屈することなく、水出し番茶を心の友にどうにかこうにか生き抜いておる。ワシにとって春の番茶は単なるお茶、ではなくなった。同志というか、気心通じ合った心の友となった。
さあみなさんも、思いがけない出来事で心をすりむいてしまったら、少々淡いめ、春の番茶に癒されてみませんか。

 

  春の番茶 180g 760円

想いを伝えるために...くるりん リニューアル」

 

  阪急石橋駅から箕面駅までの4kmを結ぶ阪急箕面線。途中の停車駅は、桜井と牧落の2駅。所要時間はわずか6分、つかの間のレイルウェイ。箕面は知る人ぞ知る観光シティーじゃ。ランドマークの大滝は四季を通じて行楽客が途切れることはない。大滝は日本の宝、世界の宝、トレジャー・シティー箕面の大滝っ!「くちびるツンととがらせてぇ〜」、おっとこれは大滝詠一、とんだ滝ちがいじゃった。


  さて今回は、別れの気配をポケットに隠して、もみじ天ぷら食べながらトレジャーハンティングへとご案内しよう。向かうは終着箕面のひと駅手前の牧落駅。駅そば徒歩2分の好立地にあるリサイクルショップ「くるりん」は、お宝がいっぱいじゃ。

 「くるりん」は、1995年、豊能障害者労働センター(以下、労セン)がリサイクルショップとしてオープンした第1号の店じゃ。「くるりっと商品がまわるように!」という願いを込めてのオープン。高級ブランド品の数々、しかも値段は格安とあって近所でも評判の店となる。

 23年前の当時は、まだリサイクルショップなどほとんどなく、古物商としての営業が大半じゃった。そのなかで「くるりん」は、ブランドものを扱うブティックをめざした。「百貨店にも負けない店にしよう!」それがスタッフ間の合い言葉となり、必ず繁盛させるという覚悟が芽生えた。オープンから「くるりん」の店長を務めるKさんもそのひとり。Kさんは、2009年、労センの機関誌「積木」でこう語っている。

 

            2009年7月10日(積木No.210) 「くるりん」K店長

 

  『障害者が働いてお金を得てそれをもとに生活している姿を応援してもらいたいのです。障害者が何もできないのではなく、皆さんと同じように「社会」に出て活き活きしている姿を見てもらいたいのです。皆さんの応援によって私たちは一歩前進することができるのです。』

 

 寄稿から9年を経たKさんに、今回ワシは、あえて「くるりん」の課題を問うてみた。Kさんは少し言いにくそうに、しかし言葉をえらびながら答えてくれた。
 「『あんたら無料(タダ)でもらったもんにようこんな(高い)値えつけて売るな…』と、たまに言われることがあるんですわ」と。Kさんはリサイクルショップの店長として、ごく少数ながらも「タダのものに値段をつけて売るなんて」という批判を真摯に受け止め、厳しい現実と向き合ってきたのだった。実は以前、リサイクル担当スタッフのTさんからも同じ話を聞いていたのでワシはさほど驚きはしなかったのじゃ。ワシ自身、労センでバイトを始めた頃、1年ほどリサイクル品の回収を経験した。週に1度リサイクル品回収のため提供者の家を訪問しありがたく品物を受け取って帰るのが日課となった。

「長年大切にしてきた高価なものだから…」と、提供者から思い入れたっぷりの話を聞き、「はい、大切に売らせていただきます。」と、品物を受け取った時、ワシはいつも感じていた。「ほんまにええもんなんや、くれぐれも二束三文などでは売ってくれるなよ!」という持ち主の親心にも似た熱い厚いメッセージを。

品物を提供する人とそれを買う人。立場の違いでその値段への感じ方は違ってくるとワシは思う。リサイクル担当者の思いも同じはずじゃ。人々の想いを反映できる、その品物にふさわしい値段をつける。それが安いか高いかは買ってくださる方に判断していただくしか今のところ道はないのかもしれぬ。

 

 

 四半世紀、店長として「くるりん」とともに歩んできたKさん。Kさんの『今以上に明るく入りやすい店になる事を目指したい』という願いを込めた大リニューアルが、去る8月9日、10日に行われた。

 

 

◆お盆休み前の2日間。店内のリニューアル作業が急ピッチで進む「くるりん」。

 

 23年もの時間を経れば店内も古びてくる。ペンキははげ落ち床も黒ずむ。それは人も同じことじゃ。ワシを見てみい、老いさらばえて朽ち果て悪臭を放ち、いささかひがみっぽくもなる。あたかも便所のように。あるいは長年の酷使に耐えきれず表面がどす黒く垢に染まったレジカウンターのように。身も心も衰えること甚だしい。悲しい限りじゃ。労センのスタッフは、そんなワシを尻目にリニューアルに邁進してくれた。

 

 

Before  ⇒   After  レジカウンターもご覧の通り


なんといってもレジカウンターはくたびれていた。が、しかしである。見よ、この大変身。店内すべてが明るくなったと錯覚するほどレジカウンターはまぶしい。特に天板は神々しい。この板を見つけだすのには苦労した。探してきたのはワシじゃから。側面は、ブー・フー・ウーでお馴染み、三匹の子ブタの家をほうふつとさせるおとぎ話チックにまとめてみた。

なんとも言えぬ複雑なニオイに満ちていた便所は、すみずみまで洗い拭き清められ、床には防水マット、タイルの壁は、ブー・フー・ウー仕様。レジカウンターで余ったシートを有効利用させていただいた。

 

 

Before  ⇒  After 床と壁を貼り替え便器もピッカピカ


 店内やトイレは見違えるような輝きをとりもどした。レジカウンターも見違える。

 「くるりん」は、これからもK店長を先頭に、地域の人々へ掘り出しモノ発見の喜びを提供し続けていくに違いない。

 

 閑静な住宅街の一角で産声をあげはや23年。これからも多くの人々に愛され、地域のショップであり続けるための大改造にも大成功!とは言っても、別にワシがリニューアルをしたわけやない。ワシはしがないアルバイトじゃ。専従のスタッフさんに言われるままにペンキを買いに走ったり、レジカウンターの天板を痛い腰をかばいつつひとりきりで運んだだけのこと。どうせワシはただのパシリに過ぎぬおいぼれじゃ…トホホのホじゃ。

           営業日時 月〜土 10:30〜18:00(日祝休業)
           電話番号  072-724-9543
           〒562-0042大阪府箕面市百楽荘1-2-7-103ハイツ弥生

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