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    【ゆっくりと茶 リレーエッセイ】箕面に絶品あり!「耕心茶〜三年番茶〜」のこと

    • 2016.11.11 Friday
    • 10:26

    毎日の生活の中で、安心して飲み続け、心も体も癒される
    無農薬・自然栽培の「ゆっくりと茶リレーエッセイ」を連載しています。

     


     

    ぼくは、福祉の現場を取材してテレビで放送するという仕事を一五年間続けてきた。

     

    二〇一三年、春、その番組が、突然打ち切られ、障害者の声を届けるというぼくのライフワークは失われた。

    その時、はじめて気づいたことがある。〈過去に取材した町々の福祉事情は多少知ってはいても、自分が暮らす町、箕面市のことは、なにも知らないぼく自身の浅薄さ〉。ぼくは、箕面市の障害者福祉の今を知るべきだと思った。

     

    さっそく、市内の事業所をインターネットで調べ、ぼくが向かったのは、「ゆっくり」という雑貨の店だった。いきなり訪ねたぼくを、怪訝そうな顔で出迎えたのが職員の北川恭子さん。北川さんとの出会いがきっかけで、ぼくは、その年の秋、「ゆっくり」の運営母体である豊能障害者労働センターの活動を取材し自費で番組を制作、テレビ放送することになる。

     

    二〇一五年一二月。テレビの放映から二年が過ぎていた。

     

    「お茶をつくっているところを一緒に見に行きません?」。突然の電話だった。相手は北川さん。お茶って…それ何のこと?ぼくは、事情がよく飲み込めないままとりあえず誘いを受ける。「日程が決まったらまた連絡しますね〜」、それだけ言うと北川さんは、そそくさと電話を切ってしまう。一本の電話が、ぼくを特別なお茶の世界に誘おうとしていた。

     

    労働センターでは、リサイクル品や介護用品、さまざまな雑貨を販売している。商品のひとつに奈良の大和高原で作られているお茶もある。今回、見学に行くお茶というのは、労働センターでは「耕心茶」のなまえで販売されている特別のお茶らしい。

     

    年が明けて、再び北川さんからの電話。「見学の日が決まりました。二月一〇日。午前一〇時出発で〜す、遅れないようにしてくださいね。私は仕事があるので行けませんけど、よろしく〜」。えっ!と思う。労働センターの方々の研修に、部外者のぼくがひとりぼっちでついて行く。ちょっと心細い…。

     

    二〇一六年二月一〇日。奈良市の東、旧都祁(つげ)村(現奈良市針町あたり)の健一自然農園にぼくはいた。農園と言ってもあたり一面、山ばかり。二月の大和高原はかさかさと乾いた感じで、緑まぶしい茶畑のイメージはない。山の斜面一帯が三〜四メートルほどの木立におおわれ、冬特有の色あせた木の葉が繁っていた。

     

    「これが三年番茶(の茶木)です。」丸くて大きな目が印象的な、代表の伊川健一さんが、刈り取りも終盤にさしかかった畑に案内してくれる。高原の頂上では、茶摘みとはほど遠い、豪快な茶木の伐採が繰り広げられていた。

     

    しかし、このときはまだ、「三年番茶」というお茶がどういうものなのか、ぼくはよくわかっていなかった。もちろん労働センターから送られてきた資料には目を通していたし、試飲用に頂いたお茶も一通り飲んではいた。けれどもそれは、まったくうわべだけの理解にすぎなかったし、このお茶の貴さにも気づいていなかった。

     

    労働センターが販売する「耕心茶」。実は、健一自然農園の「三年番茶」を独自に袋詰めしたものだ。そのお茶作りについて断片的に語られる伊川さんの言葉、たとえば、「耕作放棄地」とか、「無農薬」で「肥料もやらない」、「三年間」、「鹿児島で実際に…」などという言葉からは、なにやらとてつもないお茶がここで作られているらしい…そんな迫力が伝わってきた。

     

    ぼくは、帰宅後、「三年番茶」のことを詳しく調べてみた。「三年番茶」とは…

    【一】マクロビオティック(長寿術)の伝説的なお茶らしい。唐の時代に伝わったとされ、薬、とくに解毒薬として使用されていたという記録があるという。

    【二】畑で三年以上成長させた茶木を冬場に根元から刈り取り、幹と枝、そして茶葉、それぞれを薪火で焙煎する。マクロビオティックの提唱者、桜沢如一氏の考え方だという。

    【三】桜沢氏の依頼で、最初に「三年番茶」の生産を行ったのは、佐賀県の生産者、熊谷綱次郎さん。熊谷さんのあとを受け継いだのが、鹿児島県の川上寛継さんご夫妻。「健一自然農園」の伊川さんは、茶作りを直接、鹿児島で視察し、「三年番茶」の生産法の肝を直感的に吸収されたとのこと。

     

    このお茶は、茶木の生育に適した自然環境や、化学肥料・有害物質の影響を受けない健全な耕作地を確保するなど、いくつかの条件を満たした場所でしか作ることのできない特別なお茶だった。それが今、九州から奈良。奈良から箕面へつながっている。労働センターの「耕心茶」として多くの人々の心と体へ届いている。

     

    ぼくは、毎日このお茶を飲む。水色は、うっすら淡いあめ色。味は、じゅうぶんに焙煎しているため香ばしい。薪火による焙煎は、とても珍しく贅沢なお茶。個人の感想としては、腸の調子が良くなった。お腹が快適だから、からだ全体も快調に感じられてくる。無農薬で肥料もなし。三年間、大自然の恵みだけで育った茶木の力強さがとけ出した特別のお茶。さまざまな人々の思いが詰まった箕面の「耕心茶」は、心をつなぎ、命をつなぐかけがえのないお茶だと、ぼくは思う。

     

    高柳 保男

     

    高柳 保男 プロフィール

    1958 年生まれ。58 歳。箕面市在住。
    石川県金沢市出身。フリーランスライター、放送作家。
    1998 年〜 2013 年、KBS 京都で福祉番組「ふれ愛さんか」を制作。
    2013 年、自費で「豊能障害者労働センター」を紹介するテレビ番組を制作、放送する。
    現在もテレビや雑誌の取材を行っている。

     

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